チャイナブルー〜ある企業家の記録〜

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第33回ATP賞テレビグランプリ ドキュメンタリー部門 優秀賞 受賞
中国で大手引っ越し会社を経営する李浪。20年前に妻と2人で始めた会社は急成長、あこがれの豊かさを手に入れた。しかし李社長の心は満たされない。妻と愛人との間で揺れる二重生活も破綻の危機の中にある。中国人の馬ディレクターは、李社長の生活に5年間密着し、あらゆる場面を至近距離から映像に収めてきた。そこから見えてきたものとは?見たことのない赤裸々な映像で現代中国社会の深層に迫る異色のドキュメンタリー。

ドキュメンタリーを見ていて、この人はカメラの前でこれを言ってしまって大丈夫なのだろうかと思うことは多い。この後この発言のせいで離婚になったりしないかな、だったり、国にマークされてしまうことにならないのだろうかだったり。多くの人が見ることもなく、話題にもならなかったら大丈夫なのか。友達に見たよと言われる位で。

このドキュメンタリーの主人公は実に饒舌だった。サービス精神なのか、カメラが回っているからこそとてもよく話す。途中信じられる人間なんてほとんどいないと嘆いていたので、ディレクター(カメラ)は利害関係がないから話ができたのかもしれない。とここまで書いて饒舌なのは何も主人公の社長に限ったことでもないということに気がついた。香港で子供を出産するために仲介業者にお金を払って入国しようとする愛人、地方で仕事をする際にキックバックを要求してくる地方政府幹部の息子、お金を要求する酒の飲み過ぎで死んだ社員の親族、当たり前のようにカメラの前で話をする。大抵はお金の話だ。

一度愛人との喧嘩の場面で主人公が愛人に殴りかかり、それを止めるためにカメラマン、多分このドキュメンタリーの監督だろうがカメラを置いて主人公を止めに入った。本当ならば二人に勝手に喧嘩をさせ、殴り合い、警察沙汰にでもなった方が作品的には面白かったのだろう。けれどこの監督も反射的に心配になってしまったようだ。報道写真などでも問題になる例のあれだ。何故助けなかったのかと。何故助けなくてはならないのか。目の前の困った人には手を差し伸べる、当たり前のことだ。けれどそれでは紛争地帯の、ホスピスの難民キャンプの映像を撮るのは不可能になってしまう。けれど、たった一人でもいいから助け出してほしいと思うのも、また感情だ。この二人の喧嘩は取るに足らないものだろう。けれど取るに足らないものでも放っておけない、監督の心情が私には分かった。けれどそれでよかったのかは私には分からない。

心配しているのは見ている者たちだけのようだ。ため息をつきながら、煙草を吸いながら、正しいことも間違ったことも、全部が俺を作る一部だよ、みたいな逞しい嘆きにには何も言い返せないなぁと思った。

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のんちゃん

Posted By のんちゃん

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