ザ・ノンフィクション 高円寺でひとりぼっち

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東京、高円寺を舞台に夢を追い続ける二人の物語。

175センチの身長を生かしモデルになろうと富山から上京してきた女の子、濱未亜さん。けれどモデルの仕事はなかなか決まらず、セルフポートレートを撮るカメラマンになろうと写真を撮り始める。

私の身長は173センチある。女にしてはかなり身長が高く、初めて会う人にはモデルとかしてたの?モデルしないの?高校生の頃部活はバレーボールだったの?と言われることが多かった。友人の仕事の手伝い程度にモデルをしたことはあるが、彼女と私の違いは私は東京でずっと育ってきたことだろう。渋谷や新宿に行けばかわいい子や美しい子、見ずにはいられない雰囲気の子などわんさかいた。自分がどの程度なのかは容易に知れた。私にとって高い身長とはコンプレックスでこそあれ、自分の武器だと思ったことは殆どなかったと思う。31歳の時に双子を妊娠して、病院で診察してもらった時に医者から「身長が高いというのは出産にとってかなり有利なんですよ。骨盤も広いしお腹のキャパも大きいし」この診察の帰り道、私はとても嬉かった。初めて私の身長が役に立つと。

その双子を無事に出産した後、赤ちゃん用品のあまりの量の多さに我が家の収納はパンク寸前で、私は学生の頃から大切にしていた洋服の数々を捨てた。その際高円寺で買った古着のコートも捨ててしまった。黒い生地に金色の糸で花の刺繍がされている、とても気に入ったものだったけれど、よだれと吐き出したミルクにまみれた私がそのコートを着ることはもうないような気がした。そうやって今のために過去の時間やら物やらをものすごいスピードで捨てていった。

もう一人の主人公小野亮平さんは漫画家で過去に3冊の単行本を出版している。けれど3冊目でその漫画は打ち切り、新しい連載を持てずに、日銭を稼ぐため高円寺にバーを開店させるがなかなかうまくいかない。

この二人、高円寺を舞台にしているが彼女の方は高円寺っぽく、彼の方は高円寺っぽくない。彼女の舌ったらずな話し方、無愛想なようで寂しがり、そして個性至上主義みたいな女の子があの街にはたくさんいる。だから本当は個性は個性ではなく、その街での正しさみたいなものだけれど、それを個性と呼ぶ。

彼が高円寺はチェーン店は流行らない街と言っていたけれど、だからと言って個人経営の店ならいいのかというとそういう訳でもないのだろう。高円寺らしい個性が必要で、彼のお店の内装や音楽や照明の感じがどうもそれとはちょっと違うように感じた。街に馴染むとはどういうことだろうか。

ひとりぼっちは寂しい。春でも夏でも秋でも冬でも、朝でも夕方でも夜でも、隣に誰かいても、言葉があっても、言葉がなくても。

高円寺純情商店街 (新潮文庫)

価格¥506

順位97,030位

ねじめ 正一

発行新潮社

発売日1992年4月28日

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のんちゃん

Posted By のんちゃん

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